【FF14】調理師のとあるミコッテ族の冒険者の日記

小説/二次創作二次創作

ツイッターハッシュタグ「#冒険者のごはん事情」に投稿したもの。

名無しの貧乏オスッテくん(冒険者)がヒカセン(オスラ)とご飯する話

企画元様のルールで健全向けのため腐要素はありません。


・星3月5日
アバラシア雲海で極楽鳥という名のリスキーモブが湧いたというので、喜び勇んでフリーカンパニーの面々と挑みにいった俺は、
悲しいかなロット勝負に敗れて1人パーティからあぶれることになった。
仕方がないので現地で組める奴をさがしていたら、全身黒ずくめの重そうな鎧を着たアウラの男(角が黒いのでゼラと呼ばれている部族なんだろう)が入ってくれるらしい。
2人だけのパーティじゃたいして報酬も貰えないかと思ったら、そいつはクラン・セントリオに顔がきくらしく、トームストーンと記章だけじゃなく、なんと一万ギルまでもらってしまった。
古臭くて貧乏な狩猟生活を送る故郷を抜け出して冒険者になったはいいものの、結局ジリ貧生活を送っていてメシも時々食べられなかったりする俺には喉から手が出るほど欲しい代物だ。
サンキュー、でっけーお兄さん。
気が大きくなった俺は、そのパーティを組んでくれたアウラの男に「よかったらメシ食ってこうぜ!」と声をかけ、
ウルダハ・クイックサンドで腰を落ち着けることにした。

クイックサンドはいい店だ。
安い、美味い、早い……おまけに店主のモモディさんはあの歳だけど、美人だし。
金のない俺はだいたいここのサンドイッチによく世話になってる。
ああ、そうそう……このカリッと焼けたパン、内側はフカフカ。
ラノシアレタスがこんなに瑞々しいのは、この店のバックにロロリトが付いていて、高品質な食材を仕入れできるルートがあるからだって、前にうちのフリーカンパニーマスターが言ってたっけ。
コスタ・デル・ソルで取れたアッシュトゥーナのツナもヤミツキになるんだよなぁ。
ま、このアッシュトゥーナ、俺たち冒険者がギルドリーヴで納品してるんだけどな。

っと……同席してくれたアウラの男の話をすっかり忘れるところだった。
こいつもこのサンドイッチが好きみたいで、俺達はモブ討伐の疲れで悲鳴を上げていた胃を満たすため、もくもくと一言も発さずにメシを食った。
やっぱり身体がでかい分俺より食うみたいで、気づけばサンドイッチが完売してしまっていた。ごめんな、モモディさん。

・星3月12日
俺はこの日、最近冒険者にも出入りが解禁されたラールガーズリーチっていう、ギラバニアのアラミゴ解放軍の拠点にフリーカンパニーのお使いで来ていた。
解放軍から支援物資の製作を依頼されているメンバーが作ったのを、持ってってくれっていう。まあ、ようは使いっ走りだ。
どうせ頼むんだったらルガディンのおっさんがいるときでいいじゃん、と思ったけど、納期が明日までらしいからしょうがない。
荷物を渡し終えてほっと一息、昨日の晩からメシを食ってない俺の腹が鳴る。
フリーカンパニーにいるならご飯くらい助けてもらえるだろうって?残念、俺のフリーカンパニーはそんなに優しくない。
衣食住の面倒は自分で見ろってのが方針だ。
俺にギルがあれば、ギラバニアの地元メシでも食って帰るんだけどなぁ。
たまには故郷のクソ地味なバッファローのスペアリブが食いてえ。

そう思ってたら、いつぞやのアウラの男に声を掛けられた。
鎧姿じゃないから気づかなかったよ。聞けば、解放軍の炊き出しの手伝いに来てたらしい。
もしかしてあんたメシ作れるのか!俺は期待を込めた眼差しで男を見た。

いやぁ、ギラバニアのメシもいいもんだな。
ゴロッとした人参やら、イモやら、けっこう腹にたまるんだ。
グリダニアのメシに似てる気もするけど、こっちのが大味で俺好み。
この日はうだるように暑かったから、採れたてのロークワットを絞ったクリムゾンサイダーが喉に沁みた。
あ、ジンジャーは入れてないぜ?逆に暑くなっちまうからな!
代わりにウォーターシャードを少し多めに使ってキンキンに冷やしてあったから、俺は一気に飲み干して叫んだ。
「アラミゴ万歳!」

俺は結局、昼も夜も、アラミゴ解放軍とアウラの男にメシをおごってもらってしまった。
人の金で食うメシだ。いいね。

・星3月25日
ひんがしの国、クガネ。
来るのにちょっと金はかかるけど、安くて美味いメシがたくさんあって、俺は好きだ。
あー、なんていったっけ、オリエンタル……そうだ!うどん!
つるつるした麺があったかいスープに浸かってる食いもんなんだけど、エオルゼアにこれ輸入したら絶対ウケる。
いやもう半端なく美味いんだこれ。今度フリーカンパニーの調理得意な奴に作ってくれって頼もうかな。
俺はひんがしの国とは無縁の出身だけどさ、なんか懐かしい味がするんだよな。
そんなこんなで、うどんが食いたくなった俺はこの日クガネに行った。
で、袖の長い服に身を包んだ店員が俺のもとに恵みのうどんちゃんを運んでくる時、事故は起こった。
がっしゃーん。
哀れ、俺のうどんはひっくり返って、もう食べ物じゃない有様で地面にぶちまけられてしまった。
ぶつかってきたアウラの男(前にモブハントで出会った奴じゃないぜ、こっちは白い角だ)はぺこぺこと頭を下げる。
うどん代を出してくれるだけじゃなく、晩飯までおごってくれるらしい。

おごってくれると言われて連れて行かれたのは、見たこともない高級な料理屋だった。
席には、白い角のアウラと知り合いだったらしいあのモブハントのときのアウラ男もいる。
「ここって何食わせてくれるところなんだ?」って聞いたら、白角が「寿司屋です。お寿司」って言ってた。
もうね、出てきた食い物を見て俺はたまげたね。
ちょっぴり甘くてくせになる酢っぱいライスの上に、新鮮な生の切り身(ていっても薄くてちっちゃいやつな)が乗ってるんだ。
こんな上等な生魚なんて、リムサ・ロミンサのレストラン「ビスマルク」にでも行かなきゃ食えない!
俺ってとことんツイてる!七天に感謝しながらこの晩は死ぬほど食った。
御鮭様って魚が一番うまかったかな。
こんな風にクガネにもまだまだ美味い食いもんがあるんだろうなって帰りに小金通りを覗いたら、ナマズオって獣人の形をしたかわいい焼き菓子が売ってたからつい買っちまった。
宿はどうしたかって?焼き菓子の分で宿代が吹き飛んだから青空野宿さ。

・星3月30日
フリーカンパニーメンバーに連れられて、俺はアジムステップとかいうところに来ていた。
ドマ料理の「味噌汁」で出汁を取るのに使う貝を取るんだとかで、まあ……いつもの荷物運びだ。
貝を取りに行ったやつが「再会の市で待ってて」っていうから、その市場とやらに行くことにした。
市場つっても、エオルゼアやクガネみたいに繁華さはない。
ぽつんぽつんとテントがあって、机に商品が並べてあって……それだけ。
あのつまらない故郷を思い出す。獣を狩って、女を我が物にするためだけに戦って暮らすつまらない俺の故郷。
どこも田舎ってこんなもんなのかなとがっかりしながら、俺はエーテライトのそばであくびをした。
つられて腹が鳴る。でもどうせこんなところにろくなメシはなさそうだ。肉か魚しか売ってなさそうだし。

「あんたまた腹が減ってるのか?」
ぼやっとしてたら後ろから声を掛けてきたのは、いつぞやのアウラの男だ。
「あー……昼まだだったら、一緒にどう?」
あんたここのメシに詳しそうだし。おいしいのとか知ってない?とねだってみたら、ドンピシャ。
市に詳しいという男は、早速湯気がもくもくしている店に連れて行ってくれた。

やばい。ナメてた……
たしかに肉と魚しかないけど、ここのメシも最高じゃん……
男がおすすめしてくれたのは、ボーズっていう地元料理だった。
小麦粉でくるんだ肉団子を蒸して作ってるらしいんだけど、肉汁がすごいんだ。
熱さで俺の猫舌が焼けたけど、そんなのはお構い無しで気づけば20個くらい食ってた。
中の肉は、このあたりにいるケナガウシっていう草食獣のものらしい。
肉と、塩と、簡単な皮と……たったそれだけの、素朴な……
思えば、俺も昔姉ちゃん達と塩ふっただけのバッファローの肉を焼いて食べてたっけな。
男が「俺の奢りだ」ってくれた塩ゆでケナガウシの肉を噛んだとき、塩だけじゃないしょっぱい味がしたのはたぶん、気のせいだ。

・年月不明のメモ
懐かしいな、この日記。失くしたもんだと思ってた。
調理師ギルドに弟子入りした俺は、今は世界のあちこちに出向いて料理してる。
あれから俺は飢えることはなくなったし、いまじゃお金に困ることはほとんどない。
フリーカンパニーには俺みたいな後輩の子も出来た。
相変わらずリーダーが「衣食住は自分で」ってうるさいけど、そいつがメシに困ったらコッソリ助けてやったりもしてる。

あの鎧のアウラの男はというと、あれきり見かけていない。
どっかで会えたらまたメシでも食いたいな。今度は奢りじゃなくて、割り勘で。

――あるフリーカンパニーで調理師マイスターを務めるミコッテ族の冒険者の日記 より

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