【Hades/パトアキ】Rendezvous and Caretaking

小説/二次創作二次創作/Hades

#hadesweekly 8/12分 お題:「まちあわせ」「手入れ」

英雄が英雄で居るためにはお手入れが必要なのです。


永遠の楽土、エリュシオンの草原が揺れる。
待ちきれずに小走りで階段を駆け上がると、ちょうど愛しい顔が槍と小手を相手に睨めっこしているところだった。
今回の休暇ではアンブロシアを求めて二人でコロセウムに参加してみようという予定になっていたので、得物の手入れを頼んでいたのだ。
――懐かしい。
緩む口元をそのままにそばに寄り、終わり頃を見計らって右肩にもたれかかる。
返事の代わりに、パトロクロスが寄越したのは意味深な視線だった。
「もう一つの「手入れ」はしなくていいのか?」
二人だけにしか通じない言葉。一瞬にして、忘れかけていた思い出が蘇る。
出立前に武具を整えた後、互いの勝利と、栄光と、生存を願ったまじないのように、口付けを交わしあったあの頃の。
「アキレウス?どうなんだ?」
かつて彼を引き留めて強請ったのは自分だったものだが、再会を果たしてからというもの、すっかり立場が逆転してしまったことに英雄は眉を下げた。
「……もちろんだ」とか細く答える。声を合図に頬へ伸びてきた手のぬくもりに、近づく唇に、心を委ねて瞳を閉じた。

つまるところアキレウスの強さの隠れた秘訣は、彼が冥府送りにした面々には思いもよらない所にあるのだ。

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